今まで私は、当シリーズを通し、
“少人数の弱みを如何なる手段で覆すか”
その方法を可能な限り冷静に分析し、論じてきた。
今回の主題はそこから逸脱して語らなければならない。

実は…演奏技術、特殊機材、コンセプト、ルックス、
そのどれよりも強力無比で、
そしてそのどれよりも手に入れ難い、
ある“人間的特徴”さえあれば、
バンドはあらゆる問題を解決できてしまうのだ。
その威力の前では人数不足など、蟻の蹴りに等しい。
書いても二文字、読んでも二文字、
そいつの名は…“濃さ”だ。

・Suicide
Alan Vega : vocal
Martin Rev : synthesizer,drum machine

ほら!ほら見ろ!
濃い!濃いだろ!
バンド名なんか“自殺”だぞ!
これをさ、その辺の若造が中途半端にやってたらどう思う?
イタい!イタいだろ!目を覆う大惨事だよ!
でも、彼らは…イタくないだろ!むしろカッケー!
何故かってそれは勿論、“濃い”からだよ!!

良くも悪くもバックトラックはチープで迫力に欠けている…はず。
楽曲には目立った展開も無くドラマ性に欠けている…はず。
たったふたりなのだから画的な魅力に欠けている…はず。
…はず、なのに、いやはや参った。
動画という二次元に落とし込まれてしまってもなお、
画面より滔々と迸るふたりの“濃さ”が、
全てを成立させてしまっているではないか。
更に驚くのは、視覚情報を取っ払った音源という形になっても、
それが滅しないという点だ。

1970年代からパンクの重要人物として君臨してきた、
彼らのような“濃さ”は、一体どうやったら身に付けられるのだろう。
天賦のものなのか、はたまた生き方次第で後天的にも手に入るのか。
人生は一度きりという制約がある以上、
その答えに辿り着くのは困難を極める。
ボーカルのアランヴェガは今年(2016年)7月に亡くなったばかり。
彼の持ち得た“濃さ”の真実は、もう二度と紐解けない。

 

中村修人 : Nakamura Syuto


まだまだいるぜ、珠玉のふたりバンド。
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