へい、らっしゃい!
じゃ、早速こちら↓をドーゾ!

どう?
どうも何もって感じでしょうかね。
こちら、アニメ『幽々白書』のサウンドドラマCD収録曲。
バンドを組み、音楽で敵と戦わねばならないのに、
主人公達の音楽センスが壊滅的、
これから修行しなくちゃ!という話の流れを作る曲です。

これ、非常に分かり易く“ヘタクソ”やん。
でも、俺、すっごく気に入っちゃってさ、
一時期、これだけ狂ったように聴き続けてまして。
後輩から興味本位で借りたCDだったけど、
借りパクしようと心に決めたんですよね。
でも失敗して、自分で探して買って、
今は、どこにあるのか分からない。
多分、なくしちゃった。
そんな号泣必至のストーリー。
思い返せば、これが俺の
“スカムミュージックという概念”との
最初の、そして運命の出会いであった。

スカムミュージックとは…
マニアックなジャンルファンから
怒りに充ち満ちた異議が唱えられるのを、
重々覚悟の上で端的にまとめますと、
“ヘタクソなのに魅力溢れる音楽”のことです。
下手であるということ自体は、全く悪くない。
魅力がないことが悪いのだ。
因みに、純粋な英単語の意味としては、
“SCUM = 浮きカス、人間のクズ、底辺”
だからなのかなんなのか、
スカムミュージックに理解のない編集長は、
ゴミ箱カテゴリにポイしてくれたってわけさ。
でも、アタイ、負けない!
皆にスカムの良さを知ってもらわなきゃ!

というわけで、世界で最も有名なスカムバンド、
The Shaggs(シャッグス)をお聴き頂こう。
開始23秒辺りで自らの耳を疑うがいい。

なんなんだろう、これは。
スウィートどころか、苦虫を噛み潰したような顔になるわ、こんなん。
でも…なんか、良くない?
また聴きたくならない?

時は1960年代、お父さんが占い師に
「あんたの娘達にバンド組ませるとええよ。」
と言われ、一切音楽経験のない娘達に
無理矢理やらせた結果がコレである。
しかし、彼女らの音楽は今なお語り草で
カウンターカルチャーとしても評価され、
ドキュメント番組が制作されたり、
ミュージカルにまでなってます。
カートコバーンやフランクザッパが評価したことが、
知名度上昇の引き金だったとか。
“なんてこと ヘタクソ過ぎて 伝説に”

シャッグスはオリジナル曲を演奏したけど、
スカムはコピー、もしくはカバーでも問題ナッシング。
しつこいようですが、
“ヘタクソ”且つ“魅力的”であれば条件を満たしているわけでして、
例えばこれ↓が

こう↓なったり、

これ↓が

こう↓なったりするのも好例。

どうだ、凄いだろう。
真似しようたって出来るわけがない。
特に、小さな恋の歌をカバーした金魚草。
youtubeに動画がアップされた後、
数人の目敏い音楽ブロガーが発掘し、
好意的な記事を上げたところ、
知る人ぞ知る大人気バンドになりました。
なんと、凛として時雨のドラマー、
ピエール中野が感銘を受け、Twitterで連絡先を調べ、
直接メンバーと会食までしたらしいから驚き。
残念ながら、既に解散してしまっています。
再結成も難しそうだとか。

では、本質の話に入りましょう。
これまでの内容でお分かりの通り、
スカムとは、狙って作ることはできず、
“そうなってしまったもの”なわけです。
元々そこにあったのは、ロックであったり、
パンクであったりしたのでしょうが、
主に演奏技術の問題からそれに括られず、
代替として別の意義を与えられた結果ということです。

しかも、当然のことですが、
音楽素人から玄人まで、
誰がどう聴いてもヘタクソという音源は、
世の中にそこまで出回りません。
加えて、魅力も必須となると、
その数は更に激減します。
つまり我々は今、“奇跡”を聴いているのと同義!
そして、初期衝動が慣れによって薄れ、
演奏技術が向上した時点で、
もう二度と、一生、再び演奏することができなくなる、
そんな、刹那の叫びであることを忘れないで下さい。

また、“逆才能”も必要になります。
絶対に、一切の音楽的感覚に
産まれもって優れていてはならず、
素質が無さ過ぎることによって、
“逆開花”するのがスカムミュージシャンなのですから。
幼い時からピアノでも習っていようものなら、
時や既に遅し。絶対に取り返しがつきません。

うーむ…
なんと儚く、そして尊いジャンルでしょう。
努力を拒否し、能力に乏しいことによって、
そのクオリティを維持できるなどという音楽ジャンルが、
他のどこにありますか?

さてさて、ここで大ニュース。
The Shaggs、2017年6月再結成、
SOLID SOUND FESTIVALに出演。
開催地はアメリカの、
言い難くて有名なマサチューセッツ州。
1975年に解散した後、
1999年にもNRBQの活動30周年を記念して再結成していますが、
御姉様方、今おいくつ?
しかも、ドラムのヘレン女史、2006年に亡くなってるやん。
誰が代役を務めるのか…。
楽しみと言うよりは一抹の不安を覚えてしまうが
大丈夫かシャッグス!頑張れシャッグス!
お前ら、まさか上手くなってないだろうな!
少しでも上手くなってたら、おじさんは怒るぞ!
スカム魂、魅せてくれよな!

というわけで、長々と語らせて頂きましたが、
ここで、最初の幽々白書を思い出して頂きたい。
お気付きの方もいらっしゃるでしょうが、
そう、あれはスカムではないんです。
プロミュージシャンがわざと下手に演奏した、
言わば“偽スカム”なんです。
だから上では“という概念”と付けたわけですが、
「偽スカム!そういうのもあるのか。」
と驚きの方、あるんですよ、ホレ。↓

ああ、ああ、業が深過ぎる。
好きだ、大好きだ、
スカム、スカム、スカムゥゥゥゥ!!!
皆も好きになったかな?
テーテーテー…テテー!!!

※最後に補遺
本文でも若干触れていますが、
スカムミュージックの定義には様々な意見があります。
大抵の場合、ジャンルの定義は、
音楽雑誌や先駆者本人によって、
リスナーのための基準として設けられるものですが、
一切それらに属さない、
もとい属せない音楽なので、
明確なそれがないのです。

私のように“ヘタクソ且つ魅力的な音楽”と言う人もいれば、
“ヘタクソ過ぎて音楽未満の雑音”と言う人も。
「スカムとはヘタ過ぎて、本来の理想から乖離し、
トンデモナイ何かになってしまうという、
その現象自体の名称であり、音楽ジャンルのことではない。」
とする意見や、
“ノイズミュージック”や“ロウファイ”の一種とする意見もありまして…。
そもそも“ヘタクソ”って基準が個人各々の裁量ですからして、
でも、その部分こそがスカムの核ですから、
もうどうしようもないんですよ。
だから「みんなちがって、みんないい。」という
金子みすず先生方式しかありませんな、こりゃ。

カテゴライズする上でも業が深いなぁ…。
まあね、そういうところも大好物なんですけどね、私は。

 

中村修人 : Nakamura Syuto


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